9 隠された悪意 |
青の間の一つ、応接室には素晴らしいモノが溢れていた。 それの色は、白、黒、銀、青、そして血よりも濃くて深い不思議な赤。 手にとって広げたそれは、あたしの何倍もある男の人の服だった。 あたしはそれの中に「とう!」と飛び込み、全力で鼻に集中する。 ふんふんふん。くんくんくんくんくんかくんかくんか! 「……ベル。匂ってないで、その服、こっちにお渡しなさいな」 あっ! ご無体なっ! 宝の山に埋もれるあたしの目の前で、秘宝が一枚奪われて行く。 慌てて伸ばした手をピシャリと叩いて、略奪者もといフェリ姫は呆れ混じりの目であたしを見下ろした。 「ベル」 「……あい」 持っていった服をメイドさんの一人に渡し、フェリ姫は腰に手をあてすっくと立つ。 「あなたはまだ小さいから、手伝えとは言いませんわ。けど、お邪魔になるようでしたら、奥のお部屋に閉じこめてしまいますわよ?」 ああ! ご無体なッ!! 慌ててあたしは服の山から這い出、両手に数枚を確保するだけにとどめる。くんくんくん。 「……後でそれも没収ですわよ」 あぁん! 「……つーか、俺ぁいったい、あと何回着替えさせられるんだ……?」 ボソッと呟かれた声に、あたしとフェリ姫は数歩離れた場所にいる彼を振り返った。 大きな姿見を前に設置され、さっきから延々メイドさん達に着替えさせられているのは、この素晴らしい宝物を与えられたアルトリートだった。今も綺麗なメイドさんの手で、深い緑の上着を羽織らされている。 「肩の具合はいかがでしょう? 動かしにくいところは?」 「えっ……いや、つーか、こういった服ってよ、どれもこれも多少窮屈ってゆーか……」 「腕を伸ばしてみてください」 「伸ばす? こうか?」 「ええ。……丈はいけそうですね。背中がつっぱるようなところはありますか?」 「いや、ねェけど……つーか、その前にその暗い顔なんとかしてくれねぇかな……」 「地顔です」 きっぱりと言われ、アルトリートがあたしを非難の目で振り返る。 ああっ! 視線が痛いッ! あたしは宝物をしっかと抱え、必死に目を逸らした。 応接室には現在、あたしとレメク、フェリ姫、アルトリート、そしてフェリ姫のメイドさん部隊がひしめいている。 そこで何をやっているのかというと、アルトリートの着せ替えである。 夜会用の衣装を持たないアルトリートに、レメクの昔の服をあてがう作業をしているのだが、その衣装たるや量も質もとんでもなく凄かった。 ちなみに衣装は、あの後、王宮の兵士さんが大量に持ってきてくれたものである。 ……なんで王宮の兵士さんが持って来てくれたのかは謎だが。 「あ、あの……おじ様?」 あたしは奪われないよう宝物を抱えたまま、おずおずと暗い顔のレメクに声をかけた。 「なんです?」 レメクはこっちを向きもしない。 「この服、すっごいのばっかりなんだけど、おじ様が作ったの?」 「いいえ。頂き物です」 ……ダレに貰ったのだ、こんな上物の服。 「……こんな服、お屋敷では見たことなかったんだけど、どこに置いてあったの?」 「陛下の所に」 ……アウグスタの所に!? ギョッとしたあたし達に、レメクは淡々とした声で言う。 「夜会に出なくなってからは不要でしたから。もともと陛下から頂いたものがほとんどです。お返しするのが筋でしょう」 ……普通、もらったままにしておくのが筋なんじゃなかろーか……? あたしは首を傾げつつ、レメクに似合いそうな服の数々を見渡した。 (……アウグスタ……男服の趣味はいいんだな) 自分のドレスはアレな感じなのに。 「今回、彼が夜会に出席するにあたり、服の新調は間に合わないだろうからと陛下からお返しいただいたのです。私の服で申し訳ないのですが、何分、急なことですから。出席を義務づけられている以上、今回は仕方ないと諦めてください」 「い、いや……そりゃかまわねぇっつーか、俺にはちょっと豪華すぎるっつーか、もったいねぇ感じなんだけどよ」 暗い目のままのレメクに真正面から言われ、アルトリートがしどろもどろに返事する。 心許なげに服の裾を引っ張ったりしているのは、たぶん、そういう服が慣れていないってことなんだろう。あたしがそうであるように。 「よく似合っていますよ」 「そっ……そーか? ゼッテェあんたの方が似合うと思うんだけどよ……」 レメクに褒められ、まんざらでもなさそうなアルトリート。 あたしとフェリ姫はしみじみと着飾った彼を見上げた。 本人は不安そうだが、アルトリートはかなりの美青年なのだ。立ち振る舞いさえしっかりしてれば、そこらの王侯貴族にだって負けはしないだろう。 ええ。……なんか隣でフェリ姫があたしをジーッと見つめているのが今とても気になりますが。 「あとはダンスですが……教養を受けたことはありますか?」 「だんす!?」 ひっくり返ったその声音だけで、彼の答えは明らかだ。 「……鍛えればそれなりに踊れそうだと思いますが、今日はまだ無理でしょうね。アデライーデ姫に手ほどきをお願いしていますので、時間が空き次第特訓いたしましょう」 「アディ姫に?」 「あいつに!?」 あたしとアルトリートの声に、フェリ姫がきょとんと首を傾げた。 「あら? ベル達はもうアディお義姉様とお会いになったの?」 「え? うん。お昼ご飯の時に一緒だったの」 そーいや、アルトリートとレメクの事を話す時、アディ姫のことには触れなかったっけ。 「まぁ。それであの方、陛下の昼餐会にはおいでにならなかったのですわね」 「え。アディ姫、アウグスタの昼餐会すっぽかしたの!?」 ギョッとなったあたしに、フェリ姫は「あら」と微笑む。 「別に強制とかではありませんのよ。ただ、アディお義姉様は王宮にいる間、たいてい陛下の所でご一緒だったから。でもお義姉様のことですもの、寝食を忘れ て本に没頭していることもありますから、今回もそうなのでは、というお話だったのですわ。まさかベル達の所にいるとは思いませんでしたけれど」 「おじ様に会いに行く途中で捕まったのです!」 「あら……まぁ。そういえば、お義姉様、ベルのことに興味津々だったですものね」 うむ。 「お義姉様はとても研究熱心で、知識を得ることに貪欲でいらっしゃるから、初めて会うときは少し驚いてしまうでしょうけれど……とても良い方ですから、何か困ったことがあれば相談してみるといいですわ。ワタクシ達が知らない沢山のことを知っていらっしゃるから」 ほぅほぅ。 「それに……そうですわね、アディお義姉様が手を貸してくださるのなら、ワタクシ、そろそろおいとまさせていただいても大丈夫かしら」 言って、フェリ姫はあたしとレメクを交互に見た。 そう、マルグレーテとかいう人のことを探りに行きかけたフェリ姫は、あの後、どんよりと曇ってしまったレメクと、困り果てたあたし達を見捨てておけず、メイドさん部隊ともどもこの部屋に居残ってくれたのである。 レメクが曇っている理由は、えー……なんだ、早い話が、あたしがレメクのフルネームを言えなかったせいだったりするのだが。 フェリ姫はちょこちょことあたしの傍に寄ると、声をひそめてあたしに囁いた。 「ベル。早くクラウドール卿のご機嫌を直してくださいましね。あの方があんな風になってるところなんて、今まで見たことがありませんの。直せるのはきっと、あなただけだと思いますわ」 「けど、お義姉さま……どーやって直せばいいのです?」 正直、あんな風になったレメクがどうやって機嫌を直しているのか、よく分からないのだが。 「それが分かれば苦労はありませんわ。けど、殿方というのは案外心が繊細に出来ているのですもの。ちょっとしたことでも落ち込んでしまうのですから、助けてあげないといけませんわ」 「……あい」 途方に暮れてしょんぼり頷くあたしに、フェリ姫はニッコリと微笑む。 「大丈夫ですわよ、ベル。たぶん、いつも通りのあなたでいれば、きっと機嫌を直してくださいますわ。だってあなたはこんなにあの方が大好きなんですもの」 それはもう! あたしは力一杯頷き、微笑んだフェリ姫はレメクに二言三言告げてから部屋を出て行ってしまった。 何人かのメイドさんはその後に続いたが、アルトリートの着付けを手伝う大多数のメイドさんは残ったままだ。 「……」 アルトリートがチラッとあたしを見る。 あたしもアルトリートをチラッと見上げた。 分かってる。分かってますとも。そう目で合図しなくても分かってるんだってばっ! 「……おじ様?」 あたしは精一杯勇気を振り絞って、おずおずと服を選んでいるレメクに声をかけた。 「なんです?」 嗚呼! 相変わらず振り向いてもくれないっ! 悲しみのあまり、あたしは近くにあった宝物を一枚ひっかぶった。 「……なぁ、あんた……ちょっとほら……」 アルトリートが困ったような声をあげる。 「……大人なんだからよ……」 「…………」 レメクのいる辺りから、微妙な沈黙が漂ってくる。 あたしは手探りでもう一枚宝物をひっかぶり、腕に抱えてるほうの宝物にしょんぼりと顔を埋めた。 「……おじ様」 「…………」 「あのね……」 あのね、レメク。 「お馬鹿で……ごめんなさい……なの」 「…………?」 「名前ね、ちゃんと覚えようと思っても……覚えられないの。一つぐらいでイッパイイッパイなの」 それもアルトリートや、アルルじーちゃんみたくちょっと長めの名前になると、なんだか頭がこんがらがっちゃって、いざ口にしようとするとつまってしまう。 「ごめんなさい……」 しょんぼりと宝物を抱きしめ、すんすん鼻を動かしているあたしに、レメクのものらしい嘆息が聞こえていた。 「……あなたが、人の名前を覚えないのは……そういえば、最初からでしたね……」 ……なんだろう、その、非常に諦めの入った声は…… いっそうしょんぼりしたあたしは、レメクが振り返る気配を感じた。 おじ様っ! 「あなたは…… …… ……」 あれ? なんで沈黙? 「……なんで私のズボンを頭から被ったうえ、他の服に埋もれているんですか?」 んを? なんか声のトーンが変わったよ? 「ちみっちょ……おまえな……」 なんかアルトリートの方からもすんごい呆れた声がきた。 あれー? と首を傾げていると、宝物で塞がれていたあたしの視界がパッと明るいものに変わる。 ああっ! あたしの宝物がっ! 「なに飛びついてきてるんです!? これはあなたの帽子ではありません!」 「そ、そんなぁっ! いい匂いがっ! おじ様の匂いがっ!」 「そんなものを嗅ごうとしないでくださいっ!!」 今まで被っていたズボンを奪われ、あたしはピョイコラピョイコラ飛び上がる。 自然、抱えていた宝物が下に落ち、すかさずそれもメイドさん達に奪われてしまった。 「あぁああーッ! 宝物ーッ!!」 悲痛な声をあげるあたしに、レメクはズボンを抱えて嘆息。 あたしの宝物もといレメクの昔の服を奪っていったメイドさん達は、アルトリートの傍に駆け寄ると、なんと! 服をせっせとアルトリートになすりつけやがった! 「あぁあああ……おじ様の匂いが、アル臭にッ」 「をいちょっと待てっ! なんだ! 俺はなんか臭いのかッ!?」 「だっておじ様の匂いじゃなくなるんだもん! おじ様の匂いじゃないと駄目なんだもんっ!」 あたしは残った宝物に駆け寄り、奪われてなるものかと数枚まとめて抱え込む。 キッと振り向くと、呆れ顔の他一同の中でレメクがなにやら複雑そうな顔で突っ立っていた。 「……ベル」 「あいっ」 「……その服は、彼にあげたものですから、あなたが確保してはいけません」 そんなっ!! 絶望を目に溜めたあたしに、レメクの視線がソッと逃げる。 そんな様子を眺めて、アルトリートがあたしに呆れ果てた口調で言った。 「つーか、ちみっちょ。おまえなぁ、そんなもん抱え込まなくても、生があるだろーが、生が」 生が、と指さすのは生レメク。 …………そうでしたッ!! あたしの目がビカッと輝いた! 「とーぅっ!」 「そこから!?」 多少の距離など無問題! 助走なしに飛び上がったあたしは、ものの見事にレメクの顔に張り付いてみせる。 ふんふんふんくんかくんかおでこにむっちゅぅぅうぅうううっっ! 「べ……ベル! ベル!?」 素早くレメクがあたしを鷲づかみ。 抵抗も虚しく引き剥がされると、そこには髪の毛が乱れちゃってるレメクが。 「あなたは何をやっていますか!」 「嗅いでるの!」 「それだけでは無かったでしょう!」 目くじらをたてるレメクの額には、あたしが吸い付いた後がくっきりと。 てか、嗅ぐのは別にいいのかな? 首を傾げたあたしを抱えたまま、レメクはキッとアルトリートに向き直る。 「あなたも! ベルを煽るようなことを言わないでください!」 「え……」 アルトリートはなにやら不思議な半笑い。 「つか、えー……いや、別に嫌がるよーなことでもねェんだろ? だったら別にいいじゃねぇか。子供ってな、そーゆー無茶苦茶真っ直ぐなもんなんだしよ」 すごい。レメクに真っ正面から意見ゆってる。 思わずソンケーの眼差しを向けると、アルトリートが苦笑して肩を竦めた。 「ちみっちょはあんたのことが大好きで、あんたのことが一番なんだろ? 俺なんか何度名乗ってもアルしか覚えてくれなかったし」 うっ! 「まぁ、呼び名なんてどーでもいいけどよ……アルルンは別として……。で、あんたの気持ちも分かるけどさ、ちっこいヤツと付き合うのって、そういう根っこ の部分が大事なんじゃねェか? そりゃ、そんだけ懐いてるのに名前全然覚えてくれなきゃ、ちょっと悔しいっつーか虚しい気するけどよ。気持ちだけは汲んで やらなきゃ、可哀想じゃねぇか。そいつ、まだこんなにちっこいんだし」 ……アルトリート……いい人ッ!! あたしの目がキラッと輝いた。 彼はケニード並みにいい人だ! ちっこい呼ばわりはちと気に入らんが! 「……そう……ですね」 レメクがやや困り顔になってあたしを見る。あたしはジッとその目に熱い眼差しを向けてから、にこっと微笑んだ。 「子供……ですからね」 「そーそー。こっちが大人なんだから、大人げない拗ね方はやめよーぜ」 大人げないとまで言われて、レメクがちょっと目を丸くする。が、なにやら思い当たることでもあるのか、気まずそうに顔をそむけた。 「で、ちみっちょ。おまえは人の名前覚える練習な」 「うっ」 「『うっ』じゃねぇよ。いつまでも覚えないままじゃ駄目だろうが。いろいろ世話んなってるんだろ? 根性いれて覚えやがれ」 「う……うん」 頷いて、あたしはギュッとレメクに抱きついた。 一瞬レメクの口元がほころんで、大きな手があたしの背をポンと一回叩いてくれる。 「さて、と。一件落着ってことで……」 アルトリートはそう言って、羽織っていた上着をばっさと脱ぎ落とした。 「う〜肩凝った! なぁ、俺、もういいだろ? 着替えばっかりしんどいんだけどよ」 「待ちなさい。それはまだです」 すかさずレメクが待ったをかける。 服を手にしたメイドさん達も、ウンウンと頷いてレメクに同意した。 「いや、だってさっきから何回着替えしたよ!? つーか、もうコレでいいだろ!? これ以上着替えする意味あんのかよ!?」 「あります。まだ装飾品の準備も整っていませんし、カフスも今の流行に替えないといけません」 「そうしょくひん〜!? いらねぇだろ! 女じゃねぇんだから!」 「いいえ。王宮の夜会においては男であれ身につけるものに細心の注意を払わないといけません。まして春の大祭中の夜会です。各国の賓客もおいでになっているというのに、完璧に整えずにどうしますか」 「い、いや、別に俺ぁ添え物なんだしよ……!」 「いいえ」 びっくりするぐらい強い口調でレメクは言う。 「誰がどんな思惑であなたをこの場につれて来たにせよ、私がいる限りそんな風には扱わせません。いいですか、あなたはこの…… ……いえ……れっきとした王族の血をひく者なのですから」 ? なんか変な言い方したぞ? 「レンフォード家でどのような扱いをうけていたにせよ、この場では私の……身内として扱っていただきます。第一、あなたは陛下と対面もしなくてはいけないのですよ。初めて会うというのに、きちんとした身なりでいなくてどうしますか」 「……俺……は……」 「装飾品に関しては、最も優れた技術を持つ人を呼んであります。アロック卿ならば、あなたに合う品を見繕ってくれるでしょう」 お? 「ケニードが来るの?」 パッと顔を輝かせたあたしに、レメクは頷く。 「ええ。王都中を探しても、装飾品で彼の右に出る者はいないでしょう。あなたのために新作を作ったと言っていましたよ」 「し……新作ッ!?」 あたしはギョッとなった。 なにせあのケニードの新作だ。詳しくは知らないが、普通に買えば金貨が何枚も吹っ飛ぶシロモノのはずである。 しかも夜会の最中はすっごく忙しいと言っていたのに、言っていたのに作ってたと!? 「……私達が倒れている間、心配して、夜眠れなかったのだそうです」 「…………」 「それで、その間に思いついたものを作っていたのだそうですよ。体を動かしていたほうが楽だから、と」 ……ケニード…… あたしは目が覚めた日に会った、暖かい彼の笑顔を思い出した。 「……ケニードが来たら、うんとお礼言うね……」 「そうですね」 レメクが淡く微笑む。暖かいその笑顔は素敵だったが、なぜかアルトリートが面白くなさそうな顔になっていた。 何故? 「アル?」 「んぁ?」 「なんかムッとしてたわよ?」 「べ、別にしてねぇだろ? おまえの気のせいだっつーの」 言いながら顔を背けられては、むしろ肯定されてるよーなものなのだが。 「でもアル……」 言いかけて、あたしはふと耳に拾った音にパッと戸口を向いた。 レメクが「あぁ」と呟く。 「来たようですね」 その声にあわせるように、ガションガションという音を響かせて笑顔の素敵な美青年が駆け込んできた。 「お呼びと聞いて駆けつけましたよ! クラウドール卿!」 ああ! 笑顔が眩しいッ!! 全身からレメクスキスキオーラを発している彼に、アルトリートが唖然と棒立ちに。 慣れてるあたしはレメクの腕からピョンと飛び出すと、ケニードに向かって飛びかかった。 「ケニード!」 「ベル!」 あたし達はしっかと抱き合う。 相変わらず暖かいおかーさんみたいな匂いのする彼に、あたしはすりすりしてから顔を上げた。 「ケニード! あのね、この前ね、心配かけてごめんね!」 「この前? って、どの前?」 きょとんとする彼に、あたしは「倒れてた時のやつ!」と叫ぶ。 「どうしたんだい? 改まって。元気になった姿見れたから、もう全然平気だよ! あ! そうだ、コレ……」 言って、彼はごそごそと懐から小冊子を取り出してくる。 「この前の夜会の写真だよ。ほら、コレ! 大事なシーンだったから大きく貼り付けておいたからね!」 もちろん小冊子はレメクとあたしのツーショット。しかもあたしがレメクのほっぺにチューした場面が大きくアップになっていた。 「ケニード! 大好きよっ!」 「僕も大好きだよっ!」 あたし達は再度しっかと抱き合う。 「……なぁ、アレ、いいのかよ……?」 「? 別にいいんじゃありませんか? 猫がじゃれてるようなものですし」 向こうの方でアルトリートとレメクがなんかゆってる。 てゆか猫ってなんだ、猫って! 「それとね、この前から作ってたのがようやく仕上がったんだ。春らしくアミグダリアの花にしてみた。これなら、春の大祭らしくていいし、結い上げなくても可愛く仕上げられるよ」 シャーッ! と飛びかかりに行きかけたあたしを止めたのは、ケニードが荷物の中から取りだしてきた綺麗な髪飾り。 満開のアミグダリアのようなその髪飾りは、びっくりするぐらい精緻で美しかった。 「け……ケニード……これ……」 「うん。快気祝いというか、婚約祝いというか、そんな感じだね」 ああっ! 彼の笑顔が眩しすぎるッ!! 「で、でもっ! あたし、なんのお礼もできてないのにッ!」 あたしの声に、ケニードは微笑んだ。 「僕はね、ベル。君から素敵なものをいっぱい貰ったよ。嬉しくて舞い上がるようなことも沢山沢山あったよ。だからね、これは僕から君へのお礼なんだ」 そう言って本当に嬉しそうに笑う彼は、涙が出そうになるぐらい素敵だった。 あたしはギュッとケニードに抱きつく。 ケニードは笑って、そんなあたしの頭を撫でてくれた。 「そんなに気にしなくていいんだよ。笑って貰ってくれればそれだけで嬉しいから。女の子は、やっぱり笑顔が一番素敵だよ。ね? ベル」 にこっと笑う彼の笑顔の方が何倍も素敵だと思う。 思いながらもニコッと笑うと、やっぱり数倍素敵な笑顔を返された。 「……なぁ、やっぱりいいのか? アレ。なんかタラされてねぇか?」 「いえ……そうですか、ああいう風に言えばいいんですね……」 「なに学習しようとしてんだよ!? あんたがあんなこと言い出したら、周り中がえらいことになるだろ!?」 ……なんか向こうが賑やかだ。 ケニードもそれに気づいたのか、金属で補強されてる荷物入れを手に立ち上がり─── 「ああああーッ!」 なんかすごい悲鳴をあげた。 「そ、その深緑色の上着は! 確か十三年前の九月に行われた狩猟の晩餐会で二時間三十七分だけ着ていた服!」 ……細かいな……記憶が。 「……よく覚えていらっしゃいますね」 「もちろんです! あなたの着ていた服は全て日付と時刻入りで記憶しています!」 さすがにマニアは一味違う。 日付と時刻入りってどんな記憶なんだか。 「その服が、なぜっ! なぜ……」 言って、彼は壮絶な目でアルトリートを睨んだ。 「私の名前はケニード・リンクス・アザルト・フォン・アロックと申しますが、王宮でお会いすることは一度もありませんでしたが、どちら様でいらっしゃいますか?」 受けたアルトリートは、なぜかこちらも不機嫌そうな顔でケニードを睨む。 「……レンフォード家のアルトリートだ。つーか、てめぇ。初対面でガンつけてくるってぇのはどんな作法なんだ? ぁあ?」 「『アルトリート』……?」 顎をしゃくってけんか腰のアルトリートに、しかしケニードは険しい顔のまま訝しげに眉をひそめる。 「レンフォード公爵夫人が王女時代にお産みになったという……『アルトリート・ジュダ・フォルスト・レンフォード』卿?」 長ッ!! アルトリートの名前も長いよ!! 「……そうだっつっただろうが」 「王宮の貴婦人がたの閨に忍び入り、数々の浮き名を流しただけでなく、使用人の若い女性に次々に手を出し泣き寝入りさせ、賭博に手を出して借金を作っては公爵に支払ってもらっているという、あの?」 アルトリート以下、愕然。 思わずシンと静まりかえった中で、ケニードはまだ訝しそうな顔をしている。 てゆか、アルトリートが愕然としてるのはどーゆーことだ? 初対面のケニードに知られてるとは思わなかった、とか? (てゆか、アルトリート。女の子好きなんだな) にしても、泣き寝入りさせたっていうのはどーゆーことだ。 「アロック卿……」 静まりかえってしまった部屋に、レメクの静かな声が響く。 が、ケニードは珍しくその声に口を噤みはしなかった。一瞬だけレメクの方を見ると、わずかに目を瞠り、厳しい表情でアルトリートに向き直る。 「……本来王宮の夜会に出られる状態ではない君がこんな場所にいるということは、レンフォード公爵夫人が先王陛下のご子息を隠し続けた挙げ句、他国の耳目のあるこの時期にわざわざ自分の手柄のように連れて来たっていう噂は本当だったようだね」 「アロック卿」 「クラウドール卿。例えあなたが何を仰っても、僕はこの件に関しては黙っていられません。……王宮で、今、誰が何をどんな風に囁いているかご存じですか!?」 ケニードの声が跳ね上がった。 「陛下にはまだ御子がいない。王弟殿下は行方知れず! なら、公爵が連れて来る御落胤は、次の王太子となるのではないかと……公爵夫人は、長年先王陛下の 遺児を隠していたにもかかわらず、裏では褒めそやされているのですよ! 彼女は先王の遺児を守ったのではないか、とか言われて!」 「? どーゆーことなの?」 あたしは首を傾げる。 前の王様の子供を隠していたのに、守ってたってことになる意味が分からない。 「幼い頃から、王弟殿下……当時は王弟でなく、第一王子だけど……その人が王宮にずっと姿を現さないのは、病弱だからじゃなく、暗殺を恐れてのことだっ て、裏では言われてたんだ。実際、王族の数の少ないナスティアの王家は、他国からの暗殺者が毎年送られてきてたみたいだしね。けど……第二王妃様がお亡く なりになって、王子も行方不明になり、先王陛下が亡くなられて、今の陛下が王位を継がれた時に、とんでもない噂が流れたんだよ。第二王妃と王子は、女王陛 下に殺されたんじゃないかって」 そんな…… 「そんなの……!」 「ありえない! ありえるはずがないんだ!! でも、そういう噂を流す連中がいるんだよ! 女王陛下が即位されてから、王宮内の膿みたいな役に立たない貴 族は一掃された。それを恨んでる連中は沢山いる。けど、彼等が女王に刃向かおうにも、先頭に立つ人間がいない。そんな力のある人はいなかったし、なによ り、女王以外に王位に近い人物は、行方不明の王弟殿下以外全員女王派の人間だった。レンフォード家に嫁したマルグレーテ様では、教皇達に拒否される可能性 が高い。だから連中は、こそこそ裏で悪い噂を流すしかなかったんだ。けど、今回、そんな連中に彼等は格好の餌を与えた!」 今にもアルトリートの胸ぐらを掴みそうな勢いで、ケニードは叫んだ 「新しい、もう一人の王弟殿下の存在は、彼等を活気づけさせたんだ。連中は、公爵夫人は女王陛下のことを不審に思っていて、そのため先王であった兄の遺児 を隠していたんじゃないかって言ってる。……馬鹿げた話だよ。けど! そういう連中が、今の王宮でそんな話しをしているんだ! 他国の賓客がいるというの に! 彼等の耳にも入るというのに!! 何も考えずに!! 何故? 決まってる。今のこの時期に、君達がやって来たからだ! どうして一番してはいけない 時期に、こんなことをしたんだ!」 ケニードの怒りは、真っ直ぐにアルトリートに向けられていた。 アルトリートは蒼白になっている。 「君達が何を考えたのかなんて知らない。公爵夫人の浅はかな考えなんてもっと分からない! けど! 君たちが行ったことは、今、王宮のみならず国そのものを揺らしかねない事態を招いているんだ! どうして……!」 たまりかねたように、ケニードがアルトリートの胸ぐらを両手で掴んだ。 「どうして……君達は…… ……なのに!」 ケニードの声は小さくくぐもっていて、途中、あたしには聞こえなかった。 けれど、アルトリートには聞こえたらしい。 真っ青になた彼は、ぱくぱくと震える唇を開け閉めしていた。 「……クラウドール卿……」 アルトリートの胸ぐらを掴んだまま、その胸に頭突きをかましているような格好で、ケニードは声を振り絞った。 「……あなたのお考えは、僕ではわかりません。どんな気持ちでいるのかは……察するのがせいぜいです。けど、僕の言っていることは間違っていますか。彼等の行いは、許されるべきものですか!?」 「…………いいえ」 静かな声で、レメクは答えた。 ゆっくりと首を振って、もう一度「いいえ」と呟く。 「許されざるものです」 「では、なぜ彼等を今放置していますか! 彼等が夜会で顔を出せば、もう後戻りできないところに来るんですよ!? おまけに……こんな……」 言って、彼は痛みを堪えるような顔で言葉を続けた。 「許されないことを……どうして……!」 悲痛なその叫びに、アルトリートがよろめいた。 ケニードは掴んでいた手をとき、唇を噛む。 レメクは二人を深い眼差しで見つめ、少しだけ疲れたような嘆息をついた。 あたしはそんな三人の男を見上げたまま、ただただ首を傾げていた。 正直、あたしはケニードが何に対してそんなに激昂し、絶望しているのかよくわからない。 そう。ケニードは絶望しているのだ。 けれど、ケニードがそんな風に思い詰めるほどとんでもないことが起こっていて、その原因がアルトリート達だっていうのが今いちピンとこなかった。 「……クラウドール卿。僕が呼ばれたのは、彼の装飾品を見繕うためですね?」 「……はい」 「……僕には出来ません」 ゆっくりと、けれどハッキリとそう言って、ケニードは俯いたまま深いため息を零した。 「申し訳ありません。……けど、僕には無理です」 「……ケニード」 あたしの声に、ケニードは一瞬だけ顔を上げかけ───けれどやはり俯いたまま、嘆息をついて頭を下げた。 「持ってきた装飾品は好きに使ってくださってかまいません。なんでも好きなものを使ってください」 「アロック卿」 「……失礼します」 顔を上げず、レメクの方を見ないまま、ケニードは踵を返してしまった。 レメクは呼び止めない。 ただ、少し寂しそうな顔でケニードを見送っている。 あたしは蒼白のまま俯いているアルトリートと、珍しい表情をしているレメクを交互に見てから、ケニードを追って走り出した。 理由は分からない。 ただ、彼をこのまま見送ってはいけない気がした。 「ケニード!」 青の間を出てしばらく走ると、大きな階段がある。 その階段を駆け下りた先にあるのが、王宮の中庭へと続く廊下だった。 王宮には中庭が沢山あり、そのため、中庭と中庭の間に廊下があったりもする。左右の壁が無いその廊下をケニードがとぼりとぼりと歩いていた。 「ケニード! 待って!」 声をかけた三秒後に、ケニードが立ち止まって振り返ってくれた。 しょんぼりとしたその顔は、なんだかいつもより老けて見える。 「……ベル……」 「とぅっ!」 悄然としている彼に力いっぱい飛びかかると、よろめきながら抱き留めてくれた。 「……クラウドール卿達が……いい顔しないよ?」 「んにゃ。あのままケニードを行かせるほうが、たぶんイイ顔しないと思うわ」 きちんと抱きかかえ直してくれるケニードに胸を張ってみせ、あたしはニカッと笑う。 「だってね、おじ様、さっき寂しそうな顔してたもの。ケニードが仲間になってくれないから、しょんぼりしたのよ、きっと」 「なっ……そ、そんな……いやでも、こればっかりは……」 驚き、喜色、困惑、複雑、という表情を見せてくれたケニードは、「うー」と唸ってから深いため息をついて蹲った。 「……分かってるんだ。本当はさ……」 右の中庭から吹いてきた風が、通路に立つあたし達を撫でてから左の中庭へと去っていく。 「僕がギャンギャン言わなくったって、彼がちゃんといろいろ考えてるんだってことは」 「……おじ様が?」 「うん……」 頷いて、ケニードは落ち込んだ顔で呟いた。 「でもね、我慢できなかったんだ。嫌だよね、子供っぽくて。でも……僕は、クラウドール卿のことが一番好きだけどさ、女王陛下のこともすごく好きなんだ。だから……悪く言う人や、そういう人に力を与える人は許せない」 さわさわと風が通る。 春の柔らかく暖かな日差し。 花弁を揺らす鮮やかな花々。 春の庭はあまりにも穏やかで明るくて、暗くなっているケニードをよりくっきりと浮き彫りにしてしまう。 「あの二人は、きっと……さっきの人のこと、大事にしようって思うだろうけど。でも……僕には許せない。そんな彼等にこんな迷惑をかけるなんて……」 怒りがぶりかえしたのか、途中で怖い顔になったケニードは、けれどすぐにシュンと沈む。 「でも、余計なお世話かもしれないね。彼等には僕にはない強い力があるし、頭もいいし、公爵夫人や周りの人が何をどう言ってきたって、きっと撃退しちゃえるだろうし……」 「……でも、ケニードは、アウグスタが裏で悪く言われたり、王宮が変な風になっちゃうのが許せなかったんだよね?」 「……うん。でも」 でも? 「それって……半分ぐらいの理由かもしれない」 「半分?」 うん、と頷いて、ケニードはふて腐れたような、ちょっと拗ねた顔で呟いた。 「だって、あいつ、絶対大事にされるから」 ……えーと……? 「あいつ、って、アル?」 「へ? あぁ……うん。さっきの彼」 「そういや、最初っからなんか大事にされてたのよね」 やっぱり、王族の血を引いてるっていうのは、大事なんだろうか? ……というか、もしかして……? 「ケニード。ヤキモチ焼いたの?」 「うっ……たぶん、半分ぐらい、そうだと思う」 「じゃー、あたしと一緒だ」 正直に告白する彼に、あたしもウンウン頷いて正直に言う。 「え? ベルが?」 「そう。だって、レメクってなんかアルに甘いんだもん。ちょっとくやしい。服だってあんなにあげちゃうし! あたしにはぱんちゅ一枚くれないのに!」 「……いや、下着は誰にもあげないと思うよ、普通……」 「あたしは欲しいのに! せめてズボン一枚でもくれたら、匂いが薄れるまで嗅いで嗅いで嗅ぎまくるっていうのに、一枚もくれないのよ!?」 「……僕でも嫌だなぁ……それは……」 ひどい! ケニード!! あたしの同志なのにッ! 目をつり上げてぽかぽか肩を殴ると、何故かケニードが笑い出した。 「あはは! あぁ……ベル、なんだか君と話してると、気分が軽くなるよ」 「どーゆー意味ッ!?」 「素敵だってことだよ。あぁ……でも、そうだね……彼にクラウドール卿が服をあげるのは……僕もものすっっっごく悔しいけど」 ……今、スゴイ本気こもってたな…… 「でも、あれって、陛下や上の姫君が君にドレスをあげるのと同じなんだよね……」 「んぉ?」 アウグスタや、フェリ姫があたしにドレスをくれたのと同じ……? 「しょうがないんだ……そういうもんだから。けど、気持ちがねぇ……なかなかこう、上手く処理できないっていうか、悔しいっていうか、憎たらしいっていうか……!」 「同感なのです!」 声を上げるケニードに、あたしも握り拳を振り上げて同意する。 「僕だって欲しかった!」 「あたしもです!」 「僕だってちょっと優しくしてほしい!」 「全くです!」 「世話とかやかれてて、むちゃくちゃ羨ましい!」 「その通りなのです!」 おー! と両手握り拳で賛同すると、ケニードがくすくす笑いながら「けどね」と零した。 「そういうもんなんだよね……それが家族だよね」 「?」 家族? 「アルは家族なの?」 「え……うん……ほら、クラウドール卿が保護したってことは、そういうことだよ。君だってそうだったわけだし。いや、君のは事情がちょっと違うけど」 なんかしどろもどろに言われた。 「……ケニード。なんか隠してない?」 「……ないよ」 目が泳いだ! 「隠してるのです!」 「い、いや、ほら……って、アレ?」 いきなり声のトーンを変えて、ケニードが体を起こす。 中庭の方を向いた彼に、あたしは目をクワッとつり上げた。 「ケニード。そんなわざとらしい話題の変え方、このあたしには通用しないのです!」 「いや……そうじゃなくて、ほら、アレ」 アレ、と指さす方向を疑いの目で見ると、 なんと! そこにはアルトリートの姿が! 「え。噂を聞きつけて来た?」 「いや、違うと思うけど……」 「だって、さっきまで青の間にいたよね? ついて来てなかったよね?」 「違うと思う。それに、降りてきた階段も違うみたいだ。だって同じ階段を下りて来たなら、僕らの後ろ側にいるはずだし」 そう。アルトリートは、あたし達の進行方向にいるのだ。 しかも、廊下でなく右の中庭に。 「アルって、アウグスタみたいに門の紋章でも持ってるのかな」 「いや、それは無いと思うけど……」 言いながら、ケニードはちょっと複雑そうな顔で歩き出した。 中庭にいるアルトリートは、あたし達の方には気づいていない。 足に手をついて上体を支え、荒い呼吸を繰り返しているところから察するに、どうやら全力疾走して来たようだ。 だが、荒い呼吸のまま上げた顔はなにやら複雑に歪んでいる。その紫の瞳も、苛立ちと困惑と、どうしていいか分からない不安を濃く宿していた。 その様子に、庭に降りたあたしとケニードは顔を見合わせる。 あたしはピョンとケニードの腕から飛び降りると、ちっこい足で数歩先にいるアルトリートに駆け寄ろうとした。 その瞬間、 「やめろ!」 声が聞こえた。 それと同時にすぐ真横を何かが勢いよく走っていった。 目の前に見えたのは、すごい早さで遠ざかるケニードの背と、ギョッとした顔でこっちを見たアルトリートの顔と──── その真上から、降ってきた茶色い物─── 「────!」 あたしは思わず叫んだ。 それがケニードの名だったのか、アルトリートの名だったのかはわからない。 だが、ケニードがアルトリートとぶつかるのと、彼等の上に茶色い物が被さるのとはほとんど同時で─── がしょん、と。 重いものが落ちて割れる音だけが、やけにハッキリと耳に届いていた。 |
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